ジャニーズJr.を中心としたミュージカル『少年たち 君にこの歌を』が9月5日に新橋演舞場で開幕した。「HiHi Jets」と「美 少年」が主演を務める今回から、ジャニーズ事務所副社長である滝沢秀明が本格的に演出を務めることとなったが、ファンからは不満の声も上がっているようだ。
『少年たち』は、2019年に亡くなったジャニー喜多川氏の演出によって長く上演されてきた作品。ジャニーズ事務所において若手登竜門的な舞台でもあり、今年11月にCDデビューを予定している「なにわ男子」のメンバーを中心に上演されたり、CDデビュー前のSixTONESとSnow Man主演で2019年に映画化もされている。
第二次世界大戦中、疎開先で恐ろしい空襲を経験したといわれるジャニー氏は、その経験を生かし、反戦をテーマにしたミュージカルも手がけてきた。少年刑務所を脱獄しようとするストーリーの『少年たち』は戦争を直接のテーマとしているわけではないが、弱者を叩く“権力”に反抗する精神が根底に流れる骨太の作品だ。
2015年の『少年たち 世界の夢が…戦争を知らない子供達』はサブタイトルからも明らかなとおり戦争描写が多かったが、ストーリーも残酷だった。看守長が少年たちを棍棒で強く叩き殴り、仲が悪い少年同士を煽って喧嘩をさせ、独房にぶち込む。当時ベテランジャニーズJr.だった室龍太が演じた、この非情で意地悪な看守長が強烈だった。看守からのこうした理不尽な仕打ちに、少年たちは脱獄しようと決心する。こんなひどい環境なら脱獄して欲しいと、観客も思わず感情移入してしまう展開になっている。
しかし今回の『少年たち』はこの部分が今ひとつなのだ。“滝沢演出”となる今回、看守役を務めたのはジャニーズJr.の「少年忍者」メンバーだが、まだ10代の彼らは華奢で声も細く、かつて室が演じたような徹底的に悪い看守の姿はそこにない。そしてストーリーも変更されており、少年たちが犯罪を起こした経緯を語るシーンが延々と続く。けれども彼らは大して看守と揉めることはない。それなのに美 少年・金指一世が演じる少年が突如「脱獄しよう!」と叫び出す。このシーンを見た観客からは、「命懸けで脱獄しようって決心する理由がない」「以前の『少年たち』映画を見てない人だと、この展開は唐突すぎる」といった不満の声が上がっていた。
ミュージカル後にはショータイムもあるのだが、こちらはテンポが悪かった。今回新しく、太鼓を叩く「Crash Beat」という演目が加わったが、これが長いのだ。HiHi Jetsと美 少年がずっと太鼓を叩きっぱなし。さらに途中からUVゴーグルをかけるため彼らの顔も見えなくなり、双眼鏡を手に前のめりで見ていた観客は興醒め。会場のテンションは下がる一方だった。かつて滝沢が演出した『滝沢歌舞伎』ではキャストが長時間セグウェイに乗る演出があったことから、「セグウェイのトラウマを思い出した」という声も出ている。
ジャニー氏もバトンや旗などいろいろな道具を使う演出を好んだが、どの演目も3分ほどで終わり、次から次へと展開して飽きさせない工夫をしていた。一方、滝沢の演出は、見せたいと思ったものをダラダラと続ける傾向があるように思う。そのため、ジャニー氏の演出が好きだったファンには不評のようだ。
もっとも、生前のジャニー氏はあまり推していなかったように思われる金指に重要な役を与えるなど、滝沢独自の演出が光る部分もある。全35公演となる今回の『少年たち』。滝沢は初日を見学したようだが、今後、演出がどのように変化していくか、注目したい。
引用: https://www.cyzo.com/2021/09/post_290621_entry.html
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